子どもの生活実態調査
「生活困難度」指標について
【貧困を測定する尺度の開発の必要性】
「子供の貧困対策に関する大綱」(2014年決定、2019年改訂)に従って、全国の多くの自治体が実態調査を既に行っており、当該自治体内の子どもの貧困の実態把握をするよう努めています(実施状況の詳細についてはコチラ)。
一方で、調査の内容について全国での統一が図られているわけではないため、設問内容も各自治体によって様々であり、貧困の定義についても乱立している状況にあると言えます。「子どもの生活実態調査」を実施している全国365の自治体調査について網羅的に調べた研究によると、全調査のうち89%は貧困を定義しているものの、その定義は様々であり学術的に意味のないものもあったと報告されています※1。また、学術領域においても、「所得200万円以下」といった定義が蔓延しており、そのために貧困者の同定に失敗していると思われるケースが多いです。
したがって、当該研究分野においては、貧困の共通定義の確定と、それを測定する指標の開発を図ることが求められている状況です。
【「生活困難度」指標について】
現段階までに開発された指標の例として、本センターの阿部彩が「平成 28 年度東京都子供の生活実態調査」において用いた「生活困難度」という指標があります。これは、「低所得」・「家計の逼迫」・「子どもの所有物と体験の欠如」の3つ尺度の組み合わせから貧困を定義したものであり、低所得のみを用いて測定するよりも妥当性が高い指標となっております。詳細は以下のリンクをご参照ください。
【推奨調査項目について】
子どもの貧困の実態を把握するために有用と考えられる設問を、既に実施済みの調査の調査票から抜粋し、「推奨調査項目」として整理しました。ご参考にしていただければ幸いです。
※1)自治体が用いた「貧困」の定義(N=365):①単純世帯所得・収入17.3%、②等価世帯所得(世帯所得を世帯人数で調整した値。貧困のカットオフ値は厚生労働省「国民生活基礎調査」の貧困線を用いることが多い)45.5%、③相対的剥奪指標(食料が買えなかった経験、公共料金の滞納など)3.0%、④主観的困窮感3.6%、⑤制度受給(就学援助または生活保護受給世帯、住民非課税世帯など)7.4%、⑥等価世帯所得と剥奪の複合指標24.1%
(引用:梶原豪人・近藤天之・栗原和樹,2021, 「自治体による子どもの貧困実態調査の全国的把握」『貧困研究』27: 85-97.)